デンマークの高齢者住宅とは

以前高齢者介護施設に務めていたこともありデンマークの施設を見学するのを内心とても楽しみにしていた。

今回紹介するのは、障がい者住宅の一つであるスカンセバッケン(Skansebakken)での見学の内容だ。

デンマークの施設は日本との違いが多く、とても興味深いものとなっていた。

2017年4月下旬、ノーフンスホイスコーレSOSUコース(社会福祉コース)の授業の一環で、高齢者住宅スカンセバッケンを訪れた。

ここでは、現時点で、重度障がい者を主とする46人の成人が、暮らしている。

このうち、11人が胃ろうだ。

ここでは46人の入居者を対象とする、各アクティビティの100人の職員と50人の専門家(ペタゴー・理学療法士・作業療法士等)が働いている。

ナースは必要な時に呼ぶ。自治体でシェアしている形だ。

ナースは職員に対し、褥瘡の治療・処置の方法を指導する。

(デンマークでは、指導を受ければ、胃ろうの交換をペタゴーが行うことが出来る)

ペタゴーは専門性を高めるために、様々なアフター研修に参加する。

 

 

 

上:共有ルームの庭

居室についても触れよう。個人のポストやテラスがある。個人アパートと大差ない作りだ。これは大人として住んでいるという象徴であると、施設の方は紹介した。

46荘の部屋は、グループに分かれていて、同じ空間で共有のダイニングや庭がある。

 

左上:生活感を感じるリビング  右上:寝返りを打つのを助けるベット

左下:浴槽とバスルーム  右下:リフトのレール

 

デンマークでは居室の広さが法律で保障されている。

この施設の居室には、十分な広さのリビング。寝室。バスルームがあった。

リビングには、冷蔵庫やケトル等の生活感を感じるものがおいてある。

天井にはリビング・寝室・バスルームを繋ぐリフトのレールがあった。

私が以前勤めていた施設の居室の広さは、ここの寝室の広さとほぼ同じだった。

ベットは寝返りをうつのを助ける装置が取り付けられ、ゆっくりとした体位移動もできるし、補助付きで、素早い体位交換も可能だ。ここに住む人の多くは身体の一部分に硬直を持っている。身体介助にかかる介助者の負担を減らすために、この施設では全居室にリフトを搭載している他、寝返りを補助するベッドなど福祉器具を充実させている。

上:多目的ルーム

多目的ルームはトレーニングやアクティビティに使われる。

立ち上がって自分の足で歩くトレーニングなどを作業療法士のもと行っている。

46人の居住者のうち自分の足で歩ける人は少ない。

そのため、自然と入居者は天井を向いて過ごしている時間が長い。

そこで、この施設では天井にデザインを施していた。

アクティビティは外で行われることもある。

木登りやクライミングのアクティビティは、ペタゴーとリフトを駆使し行う。

 

左:ランニング用車いす  右:施設内の浴槽

この施設は地域のボランティアとの連携も積極的に行っている。

例えば、14日に1度地域のランニングクラブが来て、車いすに入居者を乗せ走る。

普段感じることのできないスピードや風を感じることができるこの活動は、入居者に好評であった。また外部の人との関係作ることも生活の質の向上につながっている。

それに職員もこうした取り組みについて力を入れている。

ある入居者は地域のゴスペルグループにペタゴーと一緒に通っている。

実際に歌いはしないが、チームに入り活動に参加している。曲決めにも彼は参加する

職員はこの活動が、彼にとっていかに重要かを論理的に説明することができる。

(実際にプレゼンテーションを通して見せてくれた)

 

この施設では住宅で重複障害の介護をしているかたへショートステイを提供している。写真にある浴槽は上下の高さを変えることができる。またリフトに持ち上げてこれるので、職員がかがむ必要がない。こうした職員の健康に対する取り組みはこの施設の課題となっていった。以前は、職員の病欠日数が多かった。労働環境に問題があるとして、調査を行った結果、一日あたりの移乗を行っている回数が800回以上にも上ることが判明した。そこで労働環境の改善のため補助器具の導入を行こなってきた。

 

 

上:施設内見学後の施設長の講義(ノーフンスホイスコーレMOMOYOさん日本語訳)

最後に私たちは、この施設の組織構造についての講義を受けた。

上の図があらわしているのは、様々な専門家が、総合リーダーの元、同じ理念。共通の働く目的をもって働いていることである。

一般企業と同じで、しっかりと組織化されており、それぞれの職種が役割を持ち、連携して動いている。

 

私は、今回の見学で、デンマークの職員の労働環境と、居室の広さや設備の違い、リフトなどの補助器具の違いを見ることができた。こうしたハード面の違いや、理念などのソフト面が労働者や入居者の負担を軽減させているのではないだろうか。